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新・なまず日記


2006-08-08 [火]

_ [映画]カーズ



ジョン・ラセター
2006年
アメリカ

ここは、生き物すべてが自動車の不思議な世界。レースカーのライトニングマックイーンは、ルーキーながら、いきなりピストンカップ優勝候補に躍り出た、天才レーシングカー。強烈な上昇思考で栄光をつかもうとしますが、周りが見えない傲慢な性格で、まったく友達がいません。ある日、マックイーンは、ひょんなことから、寂れた田舎町に迷い込んで....という話。

(ネタバレ防止のための改行)






































































なまずの評価 75点

リアルとファンタジーを混ぜ合わせる驚異的なCGセンス。オーソドクスなストーリーを手堅くまとめるプロの手腕も見事。

子供がいるなら、ジブリとピクサーのアニメを見ない家庭はないでしょう。なまず家でもピクサー作品は大好きで、いままで全部見ています。その最新作ということで、子供を連れて映画館で、ワクワクしながら見始めたのですが、冒頭から、ヤラレタっ!て感じですよ。こんな映像は見たことない!カーズの世界は、あらゆる生き物(ハエさえも)がすべて車というおとぎの世界なので、子供っぽい安っぽい印象になってしまうのはやむを得ないところなのに、それを、驚異的なCG技術によって、現実としか思えない光景に強引に仕立て上げているのです。車のボディは、鉄と塗料とワックスのおりなす光の反射と屈折が徹底的に書き込まれ、その車の動き、ぶつかり合い、クラッシュシーンは、動力学シミュレーションの賜物なのでしょう、まるで本物のレースシーンを実写でみているかの迫力で、まさにリアルそのもの。そんな実写とみがまう光景の中で、車には目と口がついていて、怒ったり笑ったり恋をしたりするわけです。現実としか思えないシーンなのに、バカにしてんのかと思うほどマンガチックな表現。これは痛快ですよ。おとぎ話の光景を現実の光景に強引にねじ曲げるこの力技こそCG映画の醍醐味であり、久しぶりにその原点の面白味を味あわせてもらいました。

一方、ストーリーの方は、実にオーソドックス。ああ、こんなストーリー、絶対他の映画でみたことあるよなぁ...なんて気にさせるほど、古典的な流れです。上昇思考が強くて勝つことしか考えず、それゆえに友達がいなくて孤独な男が、ひょんなことから、勝ち負けでいやあ、負けの部類の連中と付き合うことになり、最初は反発しながら、徐々に、勝つことだけが大事なのではないと言うことに気がついていく....ね、よくある感じでしょ?たとえば、ダスティンホフマンの演技がすばらしかった「レインマン」なんかも、道具立てはぜんぜん違うけれど、言いたいことは似てるんじゃないかな。

よくある話だからつまらないという話ではなくて、むしろ、なまずは「カーズ」には非常に好感を持ちました。王道のストーリーをじっくりと料理するというのは大事なことだし、特に子供向けの映画の場合は、あまり奇を衒ったストーリーよりも、定番の感動物語の方が好ましいでしょう。さらに、CG技術の非凡さを受け止めるためにも、安定感のある筋を持ってきたのは、成功と言ってもいいのではないでしょうか。

個性的で存在感のある脇役も素晴らしいですね。主人公のライトニングが迷い込んだ町の市長が、過去がある人(車?)で、それがトラウマになって田舎に引きこもっている。この市長との交流を通じて、ライトニングは後ろをみる余裕を学び、また市長は、ライトニングとの交流を通じて、前を見る勇気を学ぶのです。この辺のきっちりした作りはホントいいよ!他にも、米軍放出品ショップをやっている元軍人(軍車?)と、自然食(自然ガソリン?)レストランをやってる元ヒッピー*1が隣同士だとか。タイヤ屋の兄弟がなぜかイタリア移民だったりとか。こういう下世話なリアリティは、「車が日常生活している」というアニメ的な荒唐無稽さに、生き生きとした現実感を与えるのと同時に、思想も性格も異なる個人が、喧嘩しながらでも協力しあって生活するという、ある意味アメリカ的なユートピアとしての「寂れた田舎町」を演出することにも成功しているわけです。一粒で2度おいしい!優秀なシナリオ構成だと言わざるをえないでしょう。あえて言えば、美人弁護士のサリーは、ヒロインなんですが、今一つ、掘り下げが足らないかな。ちょっと中途半端な印象です。しかし、サリーはサリーでいろいろ過去がありそうだし、今度はサリーを主人公にしたサイドストーリーを作ってほしいと思います。

非凡なCG技術に驚嘆し、手堅いシナリオに感心する。夏休みの子供映画として、お父さんお母さんにとっても、見て損はない映画です。しかし、この時期に「勝つばっかりが大事なんじゃないんだよ」という映画ってのも、勝ち組負け組の貧富の差が広がりつつあるアメリカの世相を反映しているってとこなのかなぁ、なんて感想は、考えすぎですかね。 じゃ、チャオ!




*1こいつ、毎朝、隣の元軍人がならす起床ラッパに対抗して、ジミヘン版の"星条旗を永遠なれ"を大音量で鳴らすんですよ。ベトナム戦争に反対して、ギターで爆撃の音を表現したというこの名曲が、ヒッピーの反体制の象徴ソングだったってのはアメリカ人全員の常識!けど、日本の子供は全員そんなこと知らないって!
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