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新・なまず日記


2005-06-26 [日]

_ [その他]コラムの質

マスターカードのカード情報が4千万枚も流出してしまったニュースが世間を騒がせています。「自分のカードは大丈夫だろうか」と、不安にかられている方も多いと思います。

この件を話題にしたコラムを、同日に、偶然、二つ読みましたので、紹介したいと思います。

一つは、産経新聞のコラムで、6/24付けの産経抄です。このコラムの筆者は、カードの支払い通知が、郵送からインターネットに変わったことを忘れていて、不正使用に無防備だったことに触れ、 「技術革新はブラックボックスを生む」「便利ですよ、は、危ないよ、と響くこともある」と結んでいます。

もう一つは、IT技術系サイトPC Watchの、 山田祥平のRe:config.sys されどクレジットカードです。ここでは、筆者はまず冒頭で、カード会社は不正使用の代金を立て替えてくれるので、基本的に安全だ、としたうえで、それには毎月の支払い通知のチェックが不可欠。しかし、支払い通知は金額が書いてあるだけで、本当に自分が支払ったものか確認するのが困難だ、という課題をあげます。そして、それの解決策として、支払い通知の詳細化 - どこでなにを買ったかまで明記すべきではないか、という提案をしています。

同じ話題を扱ったコラムなのに、まったく内容が異なっているのがおもしろいです。特に、(IT)技術(革新)について、産経抄は、「ブラックボックスを生むもの」としているのに、山田氏は、「ブラックボックスの中身を、見えるようにするもの(そうできるのに、何故やらない)」と主張していて、技術に対する考え方がまったく正反対であるところが、興味深いです。

さて、コラムは、論文とは異なります。読み手がそれぞれの感想を持つもので、つまり評価軸は沢山ありうると言うことです。だから、単一の評価軸でコラムの優劣を語るのは無理があります。しかし、今回の場合は、前代未聞の情報流出事件が起こり、みんな不安を感じているという状況から考えて、その不安にどう答えるのか、という軸で評価してみるのも、意味のないことではないでしょう。

この軸で考えれば、山田氏のコラムは、非常に優秀なコラムであると思います。みんなの不安の原因である不正使用の被害が起こりうる課題を明確にし、それへの対策の提案までしているからです。このコラムの提案する対策(支払い通知の詳細化)は、すぐに実現できるものではありませんが、それでも、課題を明確にしているので、読者はそれぞれ独自の対策を打つことができます。この対策で十分かという議論の余地はあるにせよ、とりあえず、実行性のある、優秀な文章だと思います。

いっぽう、産経抄はどうでしょうか。なまずのような市井の素人が言うのもおこがましいですが、残念ながら、きわめて低劣な文章であると言わざるを得ません。一番の問題点は、なにが課題なのかが、明確になっていないことです。支払い通知がインターネットになったことが課題なのか、カードそのものが課題なのか、技術革新のブラックボックス化が課題なのか、何度読んでもさっぱりわかりません。とにかく「危険なんだ」と書いていますが、なにが課題で危険なのかがわからない。課題がわからないから対策が打てない。つまりまったく実効性のない文章です。

実効性がないのに、「危険」という、漠然とした不安だけが残ります。大新聞の一面に載ることで、社会全体に、漠然とした不安が広がっていきます。このような、 根拠のない不安をあおるということは、マスメディアが絶対やってはいけないことではないでしょうか。

社会全体に漠然とした不安が広がれば、それを利用して一儲けをたくらむ悪党が必ず現れます。今回の事件でも、「あなたのカード情報が盗まれました。不正利用の防止のため、このサイトにアクセスしてください」などという、フィッシング詐欺が横行することは間違いありません。危険と新聞に書いてあったが、でもどう対策したらいいのか、わからないな、という産経新聞の読者は、ああ、やっと対策できるんだ、と、この手の詐欺に簡単に引っかかってしまうかもしれません。今回の産経抄は、このような詐欺の片棒を担ぐ結果となっていることを、産経新聞は理解しているのでしょうか。

以上、社会の公器を自認されている大新聞のコラムが、便所の落書きと評されるインターネットのコラムより、明らかに質が劣っているという珍しい事実を発見しましたので、報告させていただきました。プロの記者さんに物申すみたいな内容になってしまって恐縮しております。今回はちょっとやりすぎました。次回からはまたオタク系の内容に戻します

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