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新・なまず日記


2005-04-15 [金]

_ [映画]実録 私設銀座警察



佐藤純弥
1973年
日本

戦後の混乱期に自然発生的に誕生した暴力集団、その名も「私設銀座警察」。いなせなイケメンヤクザ、戦前からの博徒、スケコマシ野郎と個性もバラバラなこの連中は、ポン中の殺し屋を使ってライバルの組の組長を謀殺、銀座の帝王にのしあがる。しかし方向性の違いから仲間割れをはじめ、血で血を洗う内ゲバが勃発、さらに警察の手入れも厳しくなり...というお話。

(ネタバレ防止のための改行)






































































なまずの評価 85点

暴力、血、モダンジャズ...闇鍋的カオス&ダークな映画。立ちすぎるほど立ったキャラの魅力。

戦後の混乱期を舞台に、ドロドロの抗争劇を描ききり、単なるヤクザ映画を超えて人間の闇と混沌を見せ付ける傑作映画です。

冒頭、復員兵の渡会菊夫(渡瀬恒彦)がやっとのことで妻のいるバラックに戻ってくると、なんと妻は黒人兵とよろしくヤッっている真っ最中。おまけに部屋には黒人兵とのベイビーが!激怒した渡会はあろうことか赤ちゃんを窓からブン投げ、泣きすがる妻を石で殴りつけて惨殺!タイトル表示までにここまで陰惨なシーンを見せ付けられ、いきなり気分は海の底よりも落ち込んでしまいます。こんな悲惨な始まり方をする映画もそうそうないのではないでしょうか。

自暴自棄になった渡会は、街で発作的に黒人兵を斬りつけ、追われるところを「私設銀座警察」の連中にかくまわれます。そこで、「元気が出るぜ」とヒロポンのサービス。アッサリとポン中になった渡会は、以来、ポン欲しさに専属の殺し屋になるのでした。禁断症状が出たときに「ポン...ポン...」という他はセリフらしいセリフは一切なく、いつも汚い復員兵姿で殺人を繰り返す渡会。渡瀬恒彦も、よくこんな役を引き受けたよなぁと変な感心をしてしまいます。そういえば、この映画の2年後作られる「仁義の墓場」の主役もポン中ですが、こちらは渡哲也が演じています。この二人、実の兄弟ですよね。兄弟でヤク中を演じるというのも、なにかの因縁でしょうか。

専属の殺し屋、渡会はこのように強烈なキャラですが、「私設銀座警察」の他のキャラも負けてはいません。リーダー格の池谷三郎演じるのは、正真正銘の元ヤクザ、安藤昇。クレバーで侠気あふれる親分を好演しています。青く底光りするかのような目つきが、本物の凄みを伝えてきます。戦後の混乱はそのうち収束し、これまでのやり方では組は維持できなくなると、事業へ転換する、目先の利く優秀なヤクザです。一方、銀座警察のもう一方の雄、宇佐美義一を、葉山良二が演じます。こちらは打って変わって昔ながらの暴力に頼るしかない単純な男。池谷とことあるごとに対立し、内ゲバへと発展して行きます。

そして忘れてならない、我らが辰兄い(梅宮辰夫)演じるのが、第3の男、樋口勝。この男、スケコマシにして徹底したポジティブシンキングの持ち主です。対立する池谷と宇佐美の間をヒョイヒョイと行ったり来たり。どちらの味方にもならない抜群のバランス感覚で、抗争を回避します。池谷に、「スケの尻ばっかり追いかけてるキンタマ野郎」などと言われますが、この男にとってはカエルの面にションベンです。男のプライドなど二の次三の次、徹底した実利とスケコマシこそが性分です。

しかしこの役、辰兄いにピッタリなんですね。実に生き生きと演じているのが伝わってきます。銀座警察の面々は、敵対するヤクザの親分を始末するのに、その親分の情婦を強姦して、逆上した親分をおびき出して殺害するプランを立てます。「そいつはおれのヤクドコだろ?」とウインクしてみせる樋口(梅宮)。情婦の勤めるバーにいって、「なにをお召し上がりになる?」「あんたを召し上がりたいねぇ...一発ヤラセロよ!」と過激な口説き!その夜のうちに夜這いをかけて有無を言わさず強姦!すばらしい行動力です。首尾よく任務を果たした樋口(梅宮)は、喫茶店で仲間に業務報告(つまりエロ話)。腰をクイクイっとさせながら、「ワンワンスタイルになったらヒーヒー言って部屋中歩き回ってよぉ!こっちはついていくのが精一杯、ホラ、ひざっこ赤ムケだぁ!」この下品さ、ポジティブさ、ワイルドさ、これこそ梅宮の持ち味!

梅宮辰夫の代表作品というと、やっぱり不良番長シリーズになるんですかね?しかしあれは本当にアホらしく、馬鹿らしく、くだらないシリーズなので、ちょっと可哀相(本人はそうでもないみたいですけどね。辰兄いの持ち船の名前は「番長」なんだそうで、やっぱり思いいれがあるみたいです)。仁義なき戦いの辰っちゃんもいいけれど、ちょっとマジメすぎて、辰兄いの持ち味が活かせてないと思うのですよ。で、本作品です。これこそ、辰兄いの真骨頂、辰兄いでなければ実現できなかったキャラだと思うのです。

さて、池谷の予言通り、戦後の混乱は収束し、体制を整えた警察に明日にも踏み込まれるという日、樋口(梅宮)は組の全財産を持ち出し、「どうせパクられたら4,5年はウマいモンも女もオサラバだ。パーッといこうぜぇ!」とアオりまくり。組員全員決起して大宴会へ突入。お座敷に札束ばらまいて乱交パーティーだ!モダンジャズのサックスが泣き叫ぶ中、あっちもこっちもオッパイ丸出しで肉弾戦大回転!これぞフリーセックスだ!その真っ最中、渡会はポン中の発作が起り、血反吐を吐いて野垂れ死にます。渡会が陰なら樋口が陽、キャラが狂ったように立ちまくりの坩堝のような映画はこうして幕を閉じました。見終わったあと、どっと疲労感が残ります。体力のあるときにどうぞ。

ところで、この映画の監督の佐藤純弥という人、この映画の20年後に、なんと、「北京原人 Who are you?」を撮ることになるのだからおもしろい。この闇鍋の坩堝のような映画と、史上最大のマヌケ映画との間に、どのような接点があったのか(いや、別にないと思いますけどね)。映画の神様は実にイキなはからいをするものだとつくづく思いますね。

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