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新・なまず日記


2005-04-14 [木]

_ [映画]仁義の墓場



深作欣二
1975年
日本

馬鹿で単細胞な男、石川力夫(渡哲也)は、新宿にある自分の組のためを思って、池袋ヤクザの掃除にかかる。しかしそれは「はたきで障子を破るようなもの」で、よけいに組に迷惑をかけてしまう。組から疎まれた石川は徐々に孤立を深め、破滅への道をひた走るのであった...というお話。

(ネタバレ防止のための改行)






































































なまずの評価 88点

人間ここまでダメになれるのか!石川力夫のパンクな生き様に刮目せよ!

アウトローを言われるヤクザの社会でも、ヤクザならではの規律がある。この映画は、そんなヤクザの規律の中にもいられなかった本当のクズの悲しい生き様の物語である。

若いころの石川は、パンパンの皆さんの前でいきなりショウベンしてみせるなど、行動にやや突飛なところがある男だが、それほど悪い奴というわけではなかった。しかし、いわゆる、不器用な男であります。惚れた女に気の効いたセリフの一つも言えず、つい強姦してしまう。組のためを思って敵対ヤクザにキバを向き、組同士の大抗争に発展させてしまう。そのたびにこの男は、バツが悪そうに、垂れた頭をポリポリと掻くのであります。

おまけに酒にも飲まれるタイプで、意見された腹いせに、泥酔した上で、自分の親分を斬りつけてしまう。ことの重大さにようやく気づいた石川は、強姦で知り合った情婦のところに行き、 「さむいよさむいよ」と甘えて見せるのです。本当にダメな男です。

関東所払いとなった石川は、島流し先の大阪で、パンパンからペイ(覚せい剤のことですか?)の注射を教わり、今度はまたたく間にペイにおぼれてしまう。この映画、なぜかカラーシーンとセピア色のシーンとが交互に出てくるのですが、このシーンは思いっきりセピアの方です。しかも、麦茶を煮詰めたようなセピア色の中、パンパンと石川がドヤのベッドでペイをキメて呆然とするシーンは背筋がぞっとする凄まじさです。隣のベッドのおやじがなぜか仏様をおがんでいるのもすごい。この世の果ての光景のようです。

ダメ人間確定となった石川は、ひょんなことからさらに上をいくペイ中の先輩、田中邦衛と知り合いになり、あっさり東京へ帰ってきてしまいます。あきれる昔の仲間、今川(梅宮辰夫)。いやいやながらも昔のよしみで金などやっていたのですが、かばいきれなくなり、大阪へ帰れと諭した瞬間、この狂犬コンビはあろうことか 今川を斬りつけてしまう。おまけに後日拳銃で止めを刺しにくる念の入れよう。今川を殺してなんの得になるのか。もはやなにがなんだかわかりません。義理も仁義もない、ただひたすらの狂気があるのみです。

かわいそうに、強姦で知り合った石川の情婦は結核を患い、血反吐を吐いている横で、石川が汚い注射器でペイを打っているという、この世で最低の暮らしを強いられます。 しかし、情婦が血反吐を吐いていると、ペイを打って呆然となっていた石川が、なにを思ったか情婦の枕元にすりより、 血をぬぐってくれるんですよ。狂人の、失格人間の、暴力しかないようなこの男の、ギリギリのところでみせる優しさ...?なんという印象的なシーンなんでしょう!

この情婦は、あまりの暮らしぶりのヒドさがたたって、ついには自殺をしてしまう。すると、石川は、その情婦の骨を持ち歩き、なにを思ったのか、昔切つけた親分のところにひょっこり顔を出してしまう。そして、ずうずうしくも、 「おれもそろそろ組を持ちてえんだ。土地くれませんか?あと金も...」とおねだり。あまりのことに二の句が告げない親分の前で、情婦の骨を、カリントウのよう、ポリポリ、カリカリ...とかじる石川!

疫病神、厄介者、キチガイ、等、あらゆるダメ人間の極北に至った石川は、最後は収容先の刑務所で自殺をします。 墓石にはなぜか「仁義」の文字が。あらゆる義理人情仁義を無視して暴れ狂ったこの男がなぜ「仁義」?誰にも石川の気持ちはわからないのです...

人間どこまでダメになれるかに果敢に挑戦したかのような映画。暴力シーンは得意の手持ちカメラで大迫力ですし、演出も凝りに凝っているすばらしい出来です。この映画に先行すること2年、東映にはやはり陰惨極まりない傑作「私設銀座警察」がありますが、甲乙つけがたい極北ぶりです。タイトルバックの戦後闇市の風景は、「私設銀座警察」と同じのをつかっているようです。両方見ることをお勧めします。

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