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新・なまず日記


2005-04-11 [月]

_ [映画]現代やくざ 人斬り与太



深作欣二
1972年
日本

愚連隊の番長の沖田勇(菅原文太)。懲役を終えてシャバに戻ってみると、古巣の川崎売春街は、かつての仇の滝川組と新興勢力の矢頭組の2大勢力に分割されていた。どちらにもつくつもりはない、根っからのチンピラの沖田は、昔の愚連隊仲間を引き連れ、狂犬のように噛み付きまくるのであったが...というお話。

(ネタバレ防止のための改行)






































































なまずの評価 88点

既存の権力にツバを吐く若きチンピラの躍動を文太+深作コンビが見せつける。パン助の深情けが胸にしみる名作。

言わずと知れた深作監督と菅原文太のコンビの初期の名作。最初は、仁義なき戦いのような乾いてソリッドな演出を期待していたので、本作品の冒頭、沖田(菅原文太)の「おれぁ、沖田勇。ケンカも女も強いがバクチだけはだめだ...」というモノローグで始まるのを見て、これぁハズしたかな...と思ったものでした。しかし、見始めるとド迫力の強姦シーンなどが飛び出し、ぐいぐい映画にのめりこんでしまいました。

刑務所から出所したてで女が欲しい沖田は、昔の愚連隊仲間に、パンパンを世話してもらいます。とりあえず一発、とがっつく沖田ですが、なんと、そのパンパンは、昔、沖田が強姦して、女郎屋に売り払った女でした。殺してやる!と激怒する女、逃げる沖田、しかし、不思議なことに、女はいつのまにか、沖田の情婦になってしまうのでした。この女の気持ちはどうしてもわかりませんが、憎いと思っていつつも、沖田に惹かれてしまう、このパンパンの情けには、こちらもホロリとさせられます。

沖田は、どんな組織にも尻尾を振りたくない、根っからの野良犬。2大勢力によって分割統治が始まりつつある川崎を舞台に、徹底抗戦をくりひろげます。そんな沖田を、「昔の自分を見るようだ」と、なにかと庇い立てするのが、矢頭組組長、矢頭俊介(安藤昇)。ご存知、正真正銘の元やくざ、安藤組組長だった方の好演です。この人の役はいつもそうですが、今回も、度量も知略も十分の男惚れする組長を演じきっております。ギャンギャンとあたりかまわず噛み付いて回る文太と、すべてを見通すかのような醒めきった目、物静かな中ににじみ出る男気の安藤。この対比、お互いのよさを高めあってあまりある演出です。

それにしても安藤昇の風格はすごい。敵対ヤクザを殲滅する鉄砲玉が必要になったとき、部下の一人に、黙ってタバコを勧めます。さらに火までつけてやる。驚く部下。そして、なにも言わずに、あのヘビのように覚めた目で、じっと部下を見つめます...それで、すべてを悟った部下は、大きく煙を吸い込むと、「いって参ります」。見事敵を皆殺しにしたのでした。安藤昇クラスになると、もはや言葉はいらない。 にじみ出る風格が、すべてを部下に伝えるのです。こんな演技がさらりとできるのも、やはり元やくざの実績がなせる技ではないでしょうか。

矢頭のサポート虚しく、沖田は、とうとう、ヤクザ勢力に追い詰められてしまいます。リンチが始まろうとしたまさにそのとき、あの情婦が、沖田を助けようと、ナイフを持って乱入します。あっというまに刺される情婦。 「あんた、いたいよ、いたいよ...」その声を聞いて、沖田の怒りが爆発!野獣のように荒れ狂って、数人のやくざを血祭りにあげ、あろうことか、なにかと面倒を見てくれた矢頭まで手にかけてしまいます。飼い犬に手を噛まれる?いいえ、沖田は最後まで狂犬で、暴力そのもので、庇護は一切受け付けないのです。この絶望的なまでの孤独。最後には、沖田は蜂の巣になって野垂れ死にます。情婦と沖田のぼろ雑巾のような死体を残し、呆然と去っていく矢頭...。

矢頭の思いは、結局、沖田には届かず、また、情婦と沖田の思いは、二人が死ぬことでしか確認できない。極めてやるせない映画ですが、甘ったれた感傷をふっとばし、強い焼酎のように、心の澱を洗ってくれる、そんな感じがします。辛口です。辛口の映画をお求めの方、ぜひどうぞ。

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